ふりにじ。

フリーランス2児の母が、編集ライターをしながら考えたり試したりするブログ

音声起こしが大事なのは、その人の思考回路を体得できるから。

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雪でしたねー! 喜んで飛び跳ねるタロー。え、いつの話をしているのだと? なんか明日も雪らしいですけど。

もう月末で、新年(←すでにズレ感満載)最初のブログがすごくニッチなライター業の話です。

今、たぶん職歴上で初めて、公私の私もそこそこ知っている友人に仕事で取材して、その人がしゃべった原稿を書いている。そうすると、その人の仕事のこととか思考回路とかを、取材の場で初めて会う人よりは知っているだけあって、その人の言葉が割とすらすらと文章になって出てくるのがとてもおもしろい。

人の思考は、言葉に表れる。だから、その人の言葉を正確に何回も聞くほど、思考回路に迫れると思ってる。

編集ライターの仕事を15年やって最近やっと、音声起こしがいかに大事かを実感している。えっと、作業自体じゃなくて、もちろん音声起こしの業者に出してもいいんだけど、その人がどういう言葉遣いでどういう文脈で話したかを正確に把握することが、いい原稿の第一歩なんだなという気がしている。

特に、その業界の実務家でない場合や、経験の厚い人に話を聞く場合。わたしなら、マーケティング業界でベテランマーケターに取材して、その言葉や文脈にはわたしの想像もつかないとんでもない経験とノウハウが詰まっているわけなので、それをまず忠実に起こす(知る)ことで、思考回路とともに経験やノウハウまでも体得できることにつながる。もちろん、ちょっとだけど。

出版社の社員編集者をしていたときは、月刊誌を月に50ページとか担当してて、その中で取材して自分で書くものも2-30ページあったりして、とてもとても全部音声起こしまでしていられなかった。取材時にばーっと書いた汚い手書きの(当時はPC持ち歩きという文化もなかった…!)ノートを見ながら、思い出しながら書いていた。

どれも、1時間の取材を1000字や2000字にしなくちゃいけなくて、自分が自分の浅い知識と経験で勝手に理解した言葉、その人が発した言葉とは違う言葉を原稿に使ってしまって、メールで確認原稿を送ったそばから電話がかかってきて「僕はこんな言葉を使っていない」と怒られたこともある。それはコピーライターのかただった。すごく、言葉を選んで話してくれていたのに、それを私はないがしろにしてしまって、そのことに気付いてもいなかった。

今でもあれは忘れられないなー…。

その原稿は当然、音声に戻って、書き直しました。でも、以降ももちろん仕事量は変わらないわけで、最後まで1本1本音声起こしして丁寧に、は実現できなかったと思う。

だから自分で仕事量をコントロールできる今、現場でほぼPCメモを打てたもの以外は基本すべて音声を聞き直すか業者に出すなどして、納得いく原稿を書けていることがうれしい。し、もう怒られない、という安心感もある。どんだけ小さいモチベーション…。でも、取材相手の時間と気持ちをないがしろにしていないことは、自分の仕事に積み重ねる小さな自信のひとつにつながっている。

もちろん分量には制限があるし、読み手のレベルにも合わせないといけないから、原稿はその人の言葉を全部そのまま使えるわけじゃない。そこがライターの手腕なわけだけど、その人の言葉を正確に捉えた上で、思考回路を(多少でも)体得して原稿を書けると、ときに、「そうそうこういうことを言いたかった!」といわれることがある。言語化してくれてありがとう、とまではいかないけど、そこまで先方の満足度が高いものを出せると、さらに「これを言うならもっとこういうことなんだよね」と修正が入り、先方の思考をさらに引き出したり発展させたりすることにつながる。結果、読者によりよいものを提供できるようになる。

先方が使っていない言葉を使うのは、正直リスクがある。思考を推し量れないと言葉を選べないから。そこが、「こんな言葉は使ってない!」といわれるか、「そうそうこういうことが言いたかった!」といわれるかの分かれ目だと思う。その拠り所は、思考や知識や経験をほとんど知らない、自分とかけ離れている人の場合、その人が発した言葉しかない。と、信じている。

昨年も、100本以上の原稿を書かせていただきました。今年も突っ走ります。

1歳をすぎてどんどん人間になっていく超絶興味深い生き物・ジローの話を次は書きますw