ふりにじ。

フリーランス2児の母が、編集ライターをしながら考えたり試したりするブログ

仕事と結婚と子ども。状況が同時でも、軸足を置く時期は違っていい。

たまたま読んだ記事をRTしたら、わたしにしてはとても多くRTされ、みんなこのあたりに関心があるんだなぁと思った。

読んだ記事は、専業主婦を経て47歳で再就職し、現在は五つ星ホテルの幹部を務める薄井シンシアさんのインタビューです。

このかたは別のなにかの記事で知ってたんだけど、こんなにがっつりした記事じゃなかった。この前後編でわたしがいちばん印象的だったのは、後編のこの文章でした。

私、今になってわかったことがひとつあるんです。仕事、結婚、子ども。女性は手に入れようと思ったら、これらの全てを手に入れることはできる。ただ、同時じゃないんです。

ワーママは「よくばり」なのかな?

わたしは直接いわれたことはないけど、仕事も結婚も子どもも、同時並行でこなしている(こなさざるを得ない)ワーママに対して、「子どもは生みたくて生んだんでしょ」「だから大変でも当たり前でしょ」みたいな風潮があることを感じています。

こないだの、国会議員が子どもの保育園の送迎に公用車つかうな!というのも、そういう考えが根底にあるよね。

仕事をするとか、子どもをもつとか、そういうのはたしかに個人の希望であり判断であって、別に「わたしは日本の少子高齢化に貢献するために子どもを生みました!」なんて人はひとりもいないだろう。だから、「社会のためなんだから子どもがいることで迷惑かけてもいいじゃないか!」と開き直ってる人なんていない。

だからいつも、ベビーカーで電車に乗るとき、子どもが泣くとき、どこか肩身が狭い。すいません、という気持ちになる。わたしはフリーランスだし、在宅対応できるものが中心だから、子どものことで欠勤するときに職場に肩身が狭いという気遣いはあまりない(そのかわり昼間がつぶれたら徹夜作業は発生する…)。でも去年長男がインフルエンザにかかり、さすがに実家にもお願いできなかったときは、1件仕事をキャンセルしてしまった。自分がインタビュアーの予定だったから、迷惑をかけてしまった。

それはもちろん褒められたことじゃないけど、ああ会社員の人はこういう出来事や気持ちが日常茶飯事なんだなと実感したし、どこかで、家事はともかく育児と仕事を両立するのってやっぱり物理的にキツいと思い始めていた。だから、シンシアさんの「同時じゃない」「それでいい」という発想はすごく新鮮だった。

もちろん、それは今のわたしには適用されないわけで、現状で働き続ける以上は「仕事と結婚と子ども」を同時に得ている状態なんだけど、なんか軸足の置き方を時期によってずらせばいいのだと教えてもらった気持ちになった。

仕事はするけど、5時に終わらせるのは「わたしの希望」なんだ

男の人は、うーん育児のメイン担当を妻に任せている男の人は、仕事も結婚も子どもも同時に難なく手に入る。なんなら残業したあとに同僚と飲みに行って子ども自慢もできるんだろう。おお、そう書くと、なんだそれ?!ふざけんなーという気になるw

でもそこをうらやんでも仕方なくて、夫と自分とのあいだで「自分が育児のメイン担当なのだ」となったらば、とりあえず子どもの都合と状態にすべてを合わせていくしかない。

夫の職場も「熱でお迎えで…」みたいなことに寛容で、夫婦間分担がイーブンな人は別として。でもだいたいが、ママが都合をつけてるんじゃないかなぁ。そうすると子どもも普段接触が長い人によりなつくから、寝るときはママじゃないとダメ!みたいな状況に加速度的になっていく(我が家がまさにそれ…)。

いまわたしが犠牲にしているもの…犠牲というか、物理的にできてないのは、夜に子ナシで友人と出かけること。夫と2人でゆっくり飲んだりすること。残業。

それに対してもモヤモヤしてたんだけど、あ、今の時期は、軸足は子どもなんだからと思ったら腑に落ちた。今の時期は。結婚というのを家庭を回すこと(家事)や夫との生活をいうなら、それはまあさておいて、仕事も子どもも全部全力投球しなければとどこかで自分も思っていたんだと気付かされた。

子どもはどんどん手を離れていく。0歳から1歳の間だって、ハイハイができ、喃語で気持ちを訴えるようになり、もうどんどん離れていくのを感じる。だから仕事は、もちろん責任はあるけど、フリーランスに必要な生き方としても自分の性質としても「この仕事もあの仕事も断りたくない」とつい思ってしまうのをちょっと立ち止まって、今は何が軸足なんだったっけと考え直すのも大事かなと思った。

今だけ、今だけなんだから。子どもらの人生にとって、今がものすごくわたしが必要な時期で、そのニーズはどんどん減っていってしまうのだ。だから軸足はこっちでいいんだと、すごく腑に落ちた。

採用する側ももっと「正しい目」を持ってほしい

もうひとつ、この記事を読んでこれが問題だなと思ったのは、シンシアさん自身が話されていた「専業主婦の経験は『キャリア』と見なされなかった」ということ。

主婦って意外と大変でして。全然ちゃんとできてないわたしがいいますがw

掃除とか家を整えること、毎食の献立の買い物とかバランス、もちろんいちばん手がかかる育児も、ちゃんとやろうと思ったら「あーこれは“専業”じゃないとできないわ!」とこの数年で実感した。

そのスキルってじつはすごく高くて、実際にこの数年でわたしは仕事のほうの生産性もめきめきあがっている。料理もやればやるだけ段取りがよくなってるし。

でもね、そういう家庭にまつわる業務の内容を、すべてを専業主婦の奥さんに任せてきた50代総務部長男性とかはたぶんまったく実感できない。だから、専業主婦としてブランクがあった上での再就職が難しいのか〜と、記事を読んで思った。

まあ、もうそういう組織は、前時代においてくしかないかもね。どんどん世代は変わっていくから、多様な働き方と価値観をもって自分の道をいっしょうけんめい模索している女性たちの状況と気持ちをわかって、資格とか経歴では見えない本当のその人の価値を正しく高く見積れる人が、採用側にもどんどん増えていくだろう。そうすれば、もっと働きやすくなるはず。

子どもが小さいからと、すごく能力があるのに専業主婦になっている友人たちのことを、どこかで「もったいないな」と思っていた。今考えると本当に超余計なお世話なんだけど、「知り合いがこんな人を募集しているよ?」と教えたりもした。でも、よかったんだ、彼女がそのとき力を入れようとしていた、入れたかったのは子どもだったんだから。

実際、彼女は子どもが小学生目前になって、週3くらいで働き始めたそう。応援したい。

どんな生き方もあっていいし、その生き方の中でどんな技能と経験を積んできたのかを正しくみてくれる社会になったらいい。な、と思った次第です。

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シンシアさん、7月に本を出されているそうです。今度本屋でみてみよう。

専業主婦が就職するまでにやっておくべき8つのこと

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