ふりにじ。

フリーランス2児の母が、編集ライターをしながら考えたり試したりするブログ

普段、どういうプロセスで原稿を仕上げているか、を書いてみた。

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昨日は小雨でしたね。エルゴから手を伸ばして傘の柄を持つジロー、気付けば8カ月。保育園に通い出して、刺激が増えたのもあるのか、いろんなことに興味を持つ度合いがぐっと深まった感じがする。世の中をみる解像度が上がった。ジローはレベルが上がった! でもエルゴから乗り出すから、あぶない。

昨日は作業日で、音声起こしにして20000字の座談会からテーマを抽出して、5000字くらいにまとめるという原稿を書いていた。同席してなかったのでゼロから音声を起こすのにかなり時間がかかったが、100%ビジネス系の内容だったので、理解さえできれば書くのは早かった。ビバ。

原稿を書くプロセスの棚卸しをしたいと思っていて、下書き状態になってたので、一気に仕上げてみる。ブログ、子どものことに偏ってるが、仕事のことも書いていきたい。部下や後輩がいませんので、どなたか同業者の参考になれば!

前提:仕事のほとんどはビジネス系の取材原稿

ビジネス系と、そうでない場合は、かかる時間がけっこう違う気がする。

ここでいうビジネス系とは、

・読む人が「仕事のために/仕事の勉強のために」読む(≒ビジネスパーソン

もので、

・話す人に明確な意図がある(タイアップなら「このサービスを売りたい」など)

・言葉尻や取材時の雰囲気がそんなに重視されない

といった特徴があります。

わたしの仕事はビジネス系の中でも広告・マーケティング業界を中心にやっていて、ときどき柔らかいものもあるけど、ほとんどが上記のタイプ。なので、理解さえできれば、書くのに2日も3日も悩むということはないです(そんなことフリーでやってたら生計立てられないか……)。

ときどき、これは言葉尻までしっかり音声起こしをして、その人が使った言葉に沿って組み立てていかないといけないなと思うのは、クリエイターの原稿です。わたしの仕事の場合、広告をつくる人、ですね。企業の課題を受けて、それに対して右脳的に応えようとする人。あるいは、いまどういう社会課題があるのかを、感覚的に探ろうとしている人たち。これは、かかる時間を1.5倍、見積ります。

逆に、わたしが考えるビジネス系以外の原稿っていうのは、

・読む人がごく一般の人/余暇に読む、娯楽・息抜きとして読むもの

・芸能人や文化人のインタビュー(その人のファンが読むような)

かなー。

ファンが読むような場合、その人の言葉選びとか、どういう質問にはちょっと考えて回答したっぽいのか、みたいな息づかいを感じられるのが大事かなと思うので、けっこう慎重になるような気がする。もしわたしがやる場合は、だけど。

1.音声を起こす

では、実プロセスに入ります。まず、音声起こし、する。3パターンあります。

1) 取材に同席し、自分がインタビュアーでない場合

その場でPCで打っていきます。インタビュイー(取材相手)の話すスピードや話し方にもよるけど、ビジネス系だと8割方、話した言葉のまま内容をメモできる(慣れもある)。聞き取れなかったところは「・・・」と書き、あとで聞き直す。内容が理解できなかったところは「★」など打ち込んでおいて、最後に質問し確認する。

ただし、まれに、その場でPCをぱちぱちやるのを好まれないことがある。のでシート(下:こんなやつ)など使ってるけど、インタビュイーがわりと高齢の場合や、その人の思想を聞く(考えながらしゃべってもらう)場合、あるいは対談などでその場のくだけた雰囲気が重要な場合なんかは、遠慮することもある。

そういう場合はノートに手書きでメモするけど、字が汚いから後日見直すことはないw 取材の最後に、理解できなかった内容がなかったかを確認するときだけに使う。

だいたい起こせていたら、後日の聞き直しは「・・・」の箇所だけで済むと最短。ざっと聞けば拾える場合は1時間インタビューで1時間以内。早口だった、言葉尻が重要だ、という場合は2時間くらいやはりかかる。 

 

2) 自分がインタビュアーの場合

後日、音声をゼロから起こします。ざっくり、1時間インタビューで2−3時間。聞きやすい話し方なら速い。

 

3) 取材に同席していない場合

これも作業的には2と同じ。ただ、同席してないから話の内容を知らないので、自分が聞き手になって理解している分だけ、2のほうが起こすのが速いかも。

 

※これがクリエイター取材などだと、言葉尻や「うーん、そうですね」みたいな相づちまで起こすので、5時間くらいかかることも!ぎゃーん。

音声起こしをゼロからやるのは、正直時間がすごくかかる。なのでなるべく減らしたいんだけど、取材の日時がほかの案件とかぶってしまったが断るには惜しい(担当したい)案件だったり、17時以降の案件は、この方法をとる。それに、0歳3歳が急な発熱で行かれない!という場合にも、3.の対応をさせてもらうことがあるので、その点は仕事の柔軟性の恩恵を感じている。

(編集部など発注者には、万が一こういうことがあります、と事前に理解してもらってます)

音声起こしは外注できないかな……と思うこと早3年くらい経つんですが、うまい解決策が見つかってない。1時間で1万円くらいだったかな。金額はともかく、機密のことと、業界用語がわからないんじゃないかと。結局あとからわたしが聞き直すなら、同じかな、と。

うまい使い方してるライターさんいたら、教えてください! 

2.重要な箇所を抽出する

音声起こしが終わったら。頭からざーっと読みながら、「重要だ/ここは入れたい」という箇所にアンダーラインを引いていきます。これはあまり悩まずに、原稿の主旨に合致している部分+自分が印象に残っている部分など、どんどん引いていく。

3.構成を固める

ここまできたら、PCの左半分に音声起こしのファイル、右半分に本原稿を書くワードファイルを開き、原稿ファイルのほうに書き込んでいきます。

原稿のファイルはなんでもいいけど過去の原稿をコピペして、タイトルやリードなどを仮で入れておく。思いついたら書き込んでおく。

で、原稿ファイルのほうに、左側の音声起こしをアンダーライン箇所を中心にまた頭から見直して、章立て(小見出し立て)を書いていきます。これが最初の地図。

以下、仮。

1.本サービスを取り巻く環境

・当時の市場の状況と課題

・もうスペックを訴えても売れない、ファンづくりが課題

2.この時代にメッセージが伝わることとは?

・そもそも人間は〜〜という特性がある

・企業にとっては〜〜〜が重要、そのソリューションは〜〜〜

3.具体的な開発プロセスと難点

・〜〜〜

みたいな。だいたい3つ4つになる。メディアによって、500wごと小見出しを入れて6小見出し構成、などフォーマットが決まっている場合は、この時点で6つに割っておく。

いったん書いてみて、こぼれた項目は、たとえばこの話は1のココにくっつけたらいいかな、など考えて項目を移動させる場合もある。

4.書く

2+3で1時間くらいかなー。あとは、書くのみ。

基本、構成に沿って頭から書いていくけど、柔軟に入れ替えなどしていく。この話はこの文脈にくっつけたほうがいい、くっつけられそう、みたいな。

また、ほぼ100%、目標文字数には収まらない。まあそれは想定内なのでね。3000字原稿と思っても4000、5000……5000になるとちょっと厳しいかなー、2割オーバーくらいでいったん仕上げておく。ちなみにざっくり、1000字1時間くらいかかる。

なので、書きながら文字量は随時チェックする。4000字原稿で小見出し5つなら1パート800字だから、ひとつ書き上がった時点で800を大幅に越えてたら、そこでいったん見直す。

ひとまず最後まで書けたら、もう一度音声起こしと頭から突き合わせて、さっきアンダーラインを引いたところで抜けがないか確認する。抜けがあったらどこかに入れ込む。

5.削る

規定の文字量まで、削ります。ごりごり削る。以下のようなところがないか目をさらのようにして見直す。

・言い回しが冗長、重複

・もっと短い、違う言葉で言い換えられる

・不要(〜ということがあったんです、などの「という」とかが要注意)

・無駄、蛇足なエピソードや比喩

ちなみに、Webの仕事が多いけど、雑誌など紙媒体の場合は、18字詰めなど1行あたりの字詰めに合わせて行数でみる。そうすると、1行に1文字しかない!この1字のせいで1行くってる!みたいなところを重点的に解消していく。

〜〜〜でし

た。

みたいなのの「た」を、泣き別れというのですが、Webのみの人は知らないかも。もう死語なのかしら。ノー泣き別れ。

たとえわたしの手を離れてから、いろんな人が介在してまたこの字組みが崩れていくとしても、いいのです。提出時点でひとまず完璧にしたい。

たまに、紙媒体で「自社の社名はぜったい2行にまたがらせないで」というオーダーもあったりします。そういう場合は、まあゲラで直しますね。どうしても変わってきちゃうので。

6.最後に手直し

以下のような点で、原稿内の言語検索をしながら、最終手直し。

・削った結果、元々の文脈とズレてきてないか?

最後もう一回、音声起こしと突き合わせます。話者が「そういう意味で言ってない」と絶対ならないように。

・印象的な表現を二度使っていないか?

「華開いた」「挑戦したい」

……みたいな、ちょい強めだったり意図的に強調のために使っている表現が同じ原稿に二度三度出てくると、インパクトが薄れて機能しなくなるし、かっこ悪い。

でも、その表現がたぶんそのとき気に入っていたり、取材時の印象が強くて使っているので、気付かず二度くらい書いちゃってることがよくある。ので、いちばん使いたいところ以外の表現は別の言葉に書き換える。「挑戦したい」なら、いちばんその人が強調してたところだけ残して、ほかは「こういうことにも取り組んでいきたいですね」とかにする。

・同じ表現を近いところで使っていないか?

「とても」とか「期待」とか、使いがち。なんだろうもっとある気がするが。

・言葉の統一

同じ人が自社のことを「僕ら」といってたり「我々」といってたり、混在してないか。

・体現止めの量

会話調のインタビューは基本ですますだけど、たまに「〜したい。」とか、「〜〜なんだ。そう思ったんです」みたいに、体現止めが入るとリズムが生まれるし、目立つ。でも多すぎるとダメなので、そのへんをみる。

・全体のリズム

ここまでくるとかなり感覚的だけど。音読に近い感じで読んでみて、スムーズにいかないところを直す。

ちなみに案外5と6の作業が時間かかる、ときに4と同じくらいかかることも( ꒪⌓꒪)

*****

以上です!長い。さくっと書くつもりが。

えーと、あまり推敲の時間が取れてない文章というのはこういうことになるわけで。でもWeb記事が主流になって、「2000字に収めて!」みたいなオーダーが本当に少なくなって、そもそもそういうのができるライターも少なくなっているいま、Webの記事って本当に長い。

以前は、長い原稿はそれだけ離脱者が多い、と思ってたけど、最近はそうとも言えない気がしている。なぜなら、読んでいる側もボーッとお気楽モードで読んでることが多くなってきたから。そうすると、同じ情報量でもごりごり詰めた2000字にするより、多少ふわふわ感を残した4000字のほうが、受け入れやすい、目にやさしいのかも。と思う今日このごろ。このテーマはまた書くー。

ICレコーダーは歴代オリンパスです。自宅にはテープレコーダーもあるよ!ほんとう、過去の機械になってしまったが、テレコ好きですフォルムとか。 

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